書評 「朝日新聞がなくなる日」新田 哲史 (著), 宇佐美 典也 (著)
先日は朝日新聞のコラムをまとめた「仕方ない帝国」に対する感想を書きました。(12月27日ブログ) 今回は「朝日新聞シリーズ」として「朝日新聞がなくなる日」(新田 哲史、宇佐美 典也)を読んだ感想を書きたいと思います。それにしても書店で「朝日新聞もの」というのがそれなりのジャンルになっていたのが驚きです。一新聞に対してここまで多くの本が書かれることは、やはりある世代の人々にとって朝日ブランドが良い意味でも悪い意味でも強い存在感を示しているのでしょう。
私は著者のお二人のtwitter(@TetsuNitta @usaminoriya)を日頃からフォローしているので、内容は日頃の発信内容と重複するものも多かったですが、SNSでなく書籍の対談形式のせいか内容にふくらみがあり分かりやすくなっていました。
タイトルからは批判本のような印象を受けますが、終始著者の二人は「朝日がしっかりしてくれないと困る」というメッセージを発しており、朝日再生への期待のエールを送っている本です。
あまり長くなるのもいけないので、詳しい内容紹介等はアマゾンのレビューサイトをご覧ください。
ここではあくまで私個人の感想ですが、自民党にとってこの本から学ぶべき点について書きたいと思います。
朝日新聞の衰退はリベラル系野党の建設的批判能力の衰退と軌を一にしており、この本は朝日再建へのエールであるとともに、野党を含む本来現政権に対する現実的なアンチテーゼを示さなければならない勢力に対する叱咤激励でもあるのです。
そして同時にこの本は現在の安倍政権の諸政策、方向性に対して諸手をあげて賛成できないが、消去法で自民党支持となっている層の意見も代弁しているのではないでしょうか?もしかすると自民党に替わり現実的に政権を担える野党勢力の誕生を望んでいる層がけっこうな割合でいるのではないでしょうか?
過去数年「新たな反権力のヒーロ・ヒロイン」が定期的に生まれて来ました。朝日や野党の期待だけでなく、旧来の自民党に満足しない有権者層にも支持層を広げ風を武器に選挙でも一定の支持を得て来ました。
もしもイメージ戦略やマーケティング戦略だけでない、実現可能な政策をベースに新しい時代にふさわしい日本の将来像を提示できる革新勢力が誕生した時、自民党は現在の政治基盤を維持できるのでしょうか?
自民党が現在の議席数に驕らず、時代の変化に対応しながら常に政権を維持できるよう研鑽と改革が次世代の自民党員には求められていると思います。この本は朝日新聞や野党関係者が読んでも良いと思いますが、自民党関係者も他人事と考えてはいけないと思います。
最後に朝日新聞の役割の一つとして「野党のシンクタンクになる」という提案が本の中にありました。これは素晴らしい考えだと思います。むしろ本当に政策提言できるシンクタンクを作れば良いのではないでしょうか?