「仕方ない帝国」 高橋純子
政治に興味のある人たちの中で話題になっている「仕方ない帝国」を読みました。
朝日新聞のコラム「政治断簡」とインタビューをまとめたものです。
自民党に対して批判的な意見も読むべきという考えを持っているので買って読みました。
まえがきで著者が中学2年生の夏休みに「小説吉田学校」を読んだというエピソードがあります。私も中学1年生の時に当時創刊されたAERAを読み始めました。中学生くらいから純文学や政治経済の本や雑誌は少し頑張れば読めるんですよね。
この本もぜひ中学生や高校生に読んでもらいたいです。細かいツッコミどころがたくさんあって、ちょっと癖が強く、コラムとして少しづつ読んでいるには良いのかもしれませんが本にしてまとめて読むと微妙かもしれません。ただ中高生に政治に興味を持ってもらうには面白く丁度良いきっかけだと思います。政治に興味が持ち始めるきっかけは野球チームを好きになるきっかけと同じレベルで良いと思うのです。大学に入ったり社会人になれば自然と系統立った学問の枠組みの中や自分の生活に関わるという視点から政治を見ることができます。中学生くらいでこの本を手にとって安倍政権や自民党(もしくは権力とかエスタブリッシュメント)に対して批判的な考えを持っても、たとえそれが短絡的な考えから来ていたとしても、政治に対する積極的な関心を持つことは成長の過程の中でとても大切な一歩だと思います。
コラムのタイトルに「断簡」(きれぎれになって残っている文書・書簡。文書の切れはし)とあるように短い文章で多くのテーマを扱っており、まとまりがない感もあります。しかし続けて読んでいくと一貫したテーマに気づきます。それは著者の「私」や「個」を大切にする価値観であり「組織・集団」や「公」に対して「私・個」の権利は自然と与えられる性質のものでなく、努力で勝ち取らなければいけないという考えではないでしょうか。「反安倍・反自民」がテーマだと感じる人もいるかもしれないし、それも一つの狙いなのでしょうが、一方で明確な代替案を自信を持って提示できないことも著者は解っているはずです。