やまだ加奈子の意地

By 与謝野信, 2020年6月18日

8階ホールの空気

 6月15日、永田町の党本部で自民党都連の「緊急支部長・常任総務合同会議」が通常使われる9階の会議室ではなく、コロナ対策のため、より広い8階のホールで開かれた。議題は都連の都知事選対応と都議補選に対する対策についてである。

 すでに報道等では自民党党本部が現職の小池知事を支援するとの意向が幾度も伝えられていた。しかし4年前の都知事選、3年前の都議選以来、小池都政に野党として対立してきた自民党都議団を抱える自民党都連としてはやすやすと方向転換を受け入れられるはずもなく、党本部との溝にどう対応するのかが注目されていた。会議開始前からいつも以上の報道陣が詰めかけ、歴代の総裁の肖像画が飾られたホールにはいつにない緊張感が漂っていた。

 冒頭の挨拶が終わりマスコミ関係者が退席したのち、井上都連政調会長の進行で議事が進む。鴨下都連会長、高島都連幹事長が「都知事選においては、自前候補の擁立を断念して、小池知事への支援に傾いたが、知事側が政党からの支援は受けないとの意向を受けて、推薦・支援等をせずに、実質的には自主投票で臨む」との、分かりにくいが、分かってしまうと誠に情けない説明がなされた。

 少なくとも「推薦・支援」をおこなわないということに対する安堵感。党本部に対して支援要請してきながら、最終的に自民党からの「推薦・支援」を蹴るという小池知事にかき回され、政治的に完敗したことへの屈辱感。これだけ議員がいるにも関わらず自前候補者擁立も叶わなかった脱力感。さまざまな澱んだ空気がホールには漂っていた。

都議補欠選挙

 知事選での「不戦敗」を受け入れても、次の戦いはすぐにやってくる。特に知事選と同時に行われる4つの都議会議員の補欠選挙は都連にとっては絶対に負けられない戦いとなる。二元代表制の都政運営は都議会で主導権を得られるなら、それなりに政策関与ができる。このためまずは議会内の最大会派を目指さなければいけない。現状最大会派の都民ファーストには議席数で大きく差をつけられているため、4選挙区で一つも落とせない状況である。

 しかし、ここで再び問題が出てくる。自民党が議席奪還を狙う北区選挙区において知事与党の都民ファーストが候補を擁立してきたのである。小池知事を支えることを実質的な存在意義としている都民ファーストの候補が、シンプルに小池都政の推進・支援を主張できるのに対して、小池都政に対してはっきりした態度を取れない自民党候補は「政策論議」の手足を縛られる状態になってしまう。これは下手をすれば来年の都議選でも全選挙区で自民党と都民ファーストが激突するであろうから、同じ構図が繰り返されることを意味する。

政党政治家の矜持

 都連の会議において補選の各候補予定者が挨拶と抱負を述べた。北区の候補予定者の山田加奈子の姿もそこにあった。北区で区議を4期13年務め、北区の他の候補予定者とは段違いの経験を有する山田は本来であれば政策論議で負けるはずもない圧倒的な実力者である。しかし北区が含まれる衆院東京12区は公明党との選挙区調整のため、2003年以来自民党の小選挙区候補を立てていない特殊な地域である。もともと共産党と公明党が強い地盤で、そこに前都議会議員で北区区長選で破れ、現在は参院議員の音喜多氏が「地元」として活動に力を入れていることもあり、自民党にとっては常に逆風が吹いている状態といえる。

 そんな厳しい選挙区事情に加えて、頼りの党本部と都連が小池都知事との対決を避け「自主投票」というどっちつかずの判断をされれば、内心怒り心頭であってもおかしくない。

 しかし挨拶に立った山田は気丈に振る舞っていた。政党政治家として、ときには逆風をうけることも足を引っ張られることもあるかもしれない。しかし地方議会において首長と対峙するには多数会派を形成し、そこの一員とならないといけない。辛かったであろうが、組織としての判断をグッとこらえて受け入れ、文句ひとつ言わずに戦う決意を切々と訴える山田の姿に会場は「政党政治家の矜持」を見たのではないだろうか。

 山田は普段から「政治家の嫌なところ」が無い人物である。世間の多くが持っている「嫌な政治家のイメージ」と言えば、傲慢であったり無愛想だったり、はたまた極度のナルシストや過度な出世欲を持っていたり、地に足が着いていないでフワフワしたことばかり語る、などなど色々あるであろう。このようなイメージは誇張である部分もあるが、実際政治家と「初めて会ったとき」このような悪い印象を持ったことは一度や二度では無い。山田加奈子はそういった嫌な政治家の要素がまったく無く、親しみやすい一方で地に足の着いた言動で初対面でも落ち着いて話ができる、実力と人格が備わった人物だ。

 地元と東京への貢献のため、逆境の選挙でもブレずに一途に戦う決意を述べた山田の言葉にはこの日一番の拍手が送られた。この日の会議は出席者にとっては色々と納得いかないことも多かったであろうが、たった一つ全員が共有した気持ちと言えば、こんな立派な仲間を負けさせるわけにはいかない、ということであった。

(敬称略)

One Comment

  1. 寺原きよみ より:

    泣きそうになりました。

    限られた期間ではありますが、かつ、微力な私ではありますが、全力で出来る限り、やまだ加奈子さんを応援致します📣


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