説得と納得
東京の自民党政経塾は選挙のための候補者発掘のためでも選挙の手伝いをさせるためでもなく、純粋に政治やリーダーシップについて学ぶ場所です。
塾生の中には選挙で公認をもらうことを期待して入って来る人もいるようですが、そのような期待はしないほうが良いです。国政選挙などの選挙のボランティアを募ることもありますが、選挙に勝つためのテクニックなどを勉強することはありません。
しかし一年を通じて質の高い講義を聞けますし、多くの素晴らしい仲間にも出会えるので年齢に関係なく政治に興味があったり、社会の中でリーダーシップを取っていこうと考えている方は是非とも入塾することをお勧めいたします。
印象に残った講義内容の一つに「人を説得」することと「人に納得してもらう」ことの違いについて小田全宏先生が話された回がありました。
多くの仕事では相手を理論的に説得さえすれば物事は前に進みます。多少気持ちとしては納得してなくても「会社の利益」「顧客の利益」「仕事を終える」ことなどが優先されるので「会社のロジック」に沿った説明が為されれば会議で合意を得ることができます。
私も仕事を効率的にこなす上で多くの会議や話し合いで説得を優先して、時には納得感は後回しにすることもありました。
しかし政経塾で言われたことは、政治の世界では理論で相手を説き伏せて説得しても、相手が心から納得していないと必ずいつかしっぺ返しがくるということでした。
政治の世界(ある意味で広く社会全般)では一つの特定の組織(例えば会社)の中でその組織固有の利益に資するという絶対的なロジックはなく、それぞれが自分の幸せや社会の発展を考え行動するわけです。そして現代の自由社会では相手に協力するのもしないのも(特に長期的には)自由ですから、長い目で見ると納得してもらうということが非常に大切であり、そこに時間を惜しんではいけないのです。
先日都議会で都民ファーストのある議員が豊洲における観光拠点から企業が撤退を検討している問題に関して、企業と都の間で結ばれた基本協定書を彼なりに解釈して、都に損害賠償責任がないと主張されたようです。
http://www.sankei.com/region/news/170902/rgn1709020069-n1.html
協定書の彼自身の解釈をいくら都議会の中で開陳したところで、裁判になれば判断するのは裁判所であり都議でも都庁でもありません。そもそも信頼関係を築くべき民間のパートナーと裁判になるようなこと自体が悲しいことです。説得でなく納得してもらうことが重要な良い例だと思います。
長い時間かけて交渉をしてきたであろう現場の都側の回答が「誠意を持って対応する」という真っ当なものだったのがせめてもの救いです。そしてむしろ納得してもらうことの重要性を理解しながらも都議に気を使いながら仕事をしなければならない都の職員に同情を禁じ得ません。
せっかく選挙に勝ち「政治家」となったのですから、都議の皆様には是非とも自分の「説得力ある弁論」に酔うのではなく、時間をかけてでも心から納得してもらうよう業者との信頼関係を構築する努力をし、都政を円滑に進めてもらいたいものです。