統一地方選を終えて(その4)

By 与謝野信, 2019年6月30日

統一地方選を終えて(その1)

統一地方選を終えて(その2) 

統一地方選を終えて(その3) 

からの続きです。

党の政策を実現するための首長選対策について

今回は地方議会における政策の実現について考えていきたいと思います。

二元代表制だからこそ「首長」が重要

一般にはあまり知られていない地方議会の特徴が、このシリーズの第1回目にも書きましたが、地方議会は「二元代表制」であり、知事、市区長などの「首長」は議会から選ばれるのではなく直接選挙により選ばれます。国政では議会の多数派が首相を選ぶ議院内閣制を採用しているのですが、地方行政に関しては「大統領制」に近い制度を採用しています。

このため、首長はその地域の行政機関のトップであり、非常に大きな権限を有しています。議会はおもに行政が提案する予算案や人事案を承認するという執行機関を監視する機能を担っています。

政党の政策実現という観点から論じるならば、その地域での街づくりの方向性の決定を主導したいならば「首長」の地位を選挙で勝ち取る必要が高いと言えます。

逆に、住民の一部の利益を代表するとか、実現したい政策が多岐に渡らない場合、地域行政全般を司る「首長」の立場より「議会」の一議員として自分の政策実現に注力する方が効果的でしょう。

自民党は幅広い地域住民の生活の質の向上と、中長期にわたる街の発展を目指す「国民政党」ですから、議会で多数派を構成することを目指すことはもちろんのこと、「首長選挙」においても自分たちと理念を共有する候補を擁立、当選させることに注力する必要があります。

首長の「党派性」はこの10年で大きく変わりつつある

しかし、意外なことに首長選挙は党派色の少ない候補で争われる傾向があります。区長の前職は都や区の職員、つまり地方行政に関わっていた「元官僚」か、区議や都議を経てという「元議員」というケースが多いです。元官僚も元議員も立候補時には「無所属」になるケースがほとんどで、ときに複数の政党の「推薦」を得ることになります。一つの政党の「公認候補」として出馬することも可能なのですが、「無所属+政党推薦」という形が多い。二元代表制のもと、首長は一部の党派でなく「議会」全体のチェックを受ける立場なので、一つの党派の「公認」となるとお互いの「相互牽制」上あまり好ましくない、という意識が働いているのかもしれません。同様に首長が党首を務める政党が議会で多数派を構成すると議会の行政に対するチェック機能が低下する恐れがあります。

このため、首長には党派色は少ないが行政に精通していて、かつ自分たちと政治理念を共有する「元官僚」などを選挙で擁立して、議会では多数派構成を目指して議会運営を通じて理想的な街づくりを進める、というのが多くの区で見られた自民党のスタイルで、前回の東京都知事選における増田氏の擁立などまさにこのスタイルに則っているのです。

しかし大阪においては橋下徹氏と大阪維新の会がここ10年でこのスタイルで大きく変えてしまいました。大阪都構想などを推進するために首長自らが党首となる地域政党を立ち上げ、議会における多数派の構成を目指すようになりました。その後複数回の首長・議会選挙を経て、自分たちの党派で首長と議会多数派を制することを目指すことが定着してきました。この流れは東京においても、小池都知事就任後、議会運営をコントロールすべく都民ファーストの会を立ち上げる形で実現しています。

このように「首長」にも「議会」にも党派性を持ち込む流れができてしまうと、昔の党派性の弱い首長と協力しながら党派性の強い議会運営を通じて政策の実現を目指すということが非常に難しくなります。そもそも「首長」の権限が強い二元代表制ですから、議会で自民党単独で過半数を得ているなならまだしも、3割強の議席数を確保しているだけでは政治の主導権は握れません。

さらに言うならば、東京都おいては23区は「特別区」となっており、実は他の市、特に政令指定都市と比べると圧倒的に権限が「都」に移管されているので、東京における政治の主導権は都知事選挙に勝利しない限りなんともならないと言えます。

まとめると、東京における都市運営の政治上の主導権を握るためには、都議会や区議会で最大会派になるだけでは足りなく、首長(都知事、区長、市長)の選挙においても「公認候補」とまではいかなくとも、自民党の都議や区議出身者や、自民党が公募で選んだ「自民党と強く政策と理念を共有できる」候補を擁立して首長と議会両方において政策の推進実行ができる体制を整える必要があると言えます。

自前候補を擁立しない場合は「政策協定」を

しかし首長選挙においてはよっぽどのスキャンダルなどがない限り知名度、実績に勝る現職が選挙では有利なのが現状です。一度首長選挙で負けてしまうと、少なくとも2~3期(8~12年)、場合によっては4~5期(16年~20年)という長期にわたり「政権奪還」が難しくなります。そこで選挙で対立候補を擁立しないとしても、せめて党として現職首長と政策の具体的な方向性で合意する「政策協定」を結ぶことにより自分たちの政策実現、都政・区政における影響力を強めることをしなければいけないと思います。

政策協定のよいところは、具体的な大きな個別政策課題について方向付けることができるので、属人的な好き嫌いでなく比較的明確な基準を持って推薦を決めることができます。理想的に言うならば、首長選に対する候補者選定時に、党として先にこの「政策協定」の試案を作成した上で、現職首長との間でこの政策協定が合意できない場合、この政策協定を公約として実行する対立候補を擁立するというのが「政策本位」な首長選対策かと思います。

先日次期都知事選をめぐり、都連は候補者の選考委員会を設置し、小池百合子知事とは別の独自候補を擁立することで一致した、と報道されました。

自民党都連、知事選で独自候補擁立へ 小池都政「信頼に値しない」

今後、候補者選考を進めることになると思いますが、可能であれば都連として「先に」都政に対するビジョンと主要政策目標、今後の東京の具体的な都市計画などをまとめて公表した上で、その政策実現を目的とする候補の擁立を進めていただきたいです。

自民党が主導する東京再編議論

都内における特別区(いわゆる23区)の権限を強化するような東京都の抜本的な統治機能改革、例えば一部の区を再編にして市に移行するなどの「再編議論」は政治家や官僚、学者の間で「内輪の論議」に留まっており、自民党として明確な再編の青写真を有権者に提示してはいません。

都市機能を向上し、世界の都市間競争に勝っていくためにも東京都の再編、構造改革は避けて通れません。自民党は都市・地域経済の発展に寄与する地方自治体制の確立のため、率先して再編議論を引っ張っていくべきです。

大阪での現状は多くの示唆に富んでいます。先日の入れ替え選挙で勝利した松井市長、吉村知事共に都構想をはじめとする大阪維新の政策実現という大きな目標を掲げていなければ、あれだけ強い候補となり得たのでしょうか?候補者個人の知名度や人気もあるのでしょうが「大阪維新の候補者」だから投票され支持される。そして党が支持される理由は党の政策の中身が支持されているからではないのでしょうか?

現職の首長に勝てる候補として「知名度や人気」「経験や実績」といった要素を重視しすぎると、結局「政策の違い」が不明瞭になってしまう懸念があります。「勝てる候補」という考えより「政策を理解して支持してもらう」ことを重視すべきではないでしょうか。都連としても今後の新しい政策本位での「首長選対策」というものを今回の都知事選対策を契機に深めていき、各総支部における「区長選対策」への手本を提示することが望まれます。


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